審査委員長
赤池 学(プロジェクトデザイナー、科学技術ジャーナリスト)
消費者目線で、木材の新しい商流形成を促す多くの取組から、地域材活用注がれた熱い思いを感じた。単なるプロジェクト・アウトでなく、木材活用を促す六次産業のネットワークを構築する先進例も見受けられた。成功の鍵は域外企業やクリエイター、流通と協働し地場にはないノウハウ習得に力を注いでいること。木材活用の新たなビジネスモデルが賞を通じて生み出されていくことを、心より願っている。
★分野長
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建築・空間・建材・部材分野
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隈 研吾(建築家、東京大学教授)★
審査を終えて、日本の木を扱う技術、その周辺にある技術はやはりすごいと感じた。木を大切にする文化と現代の建物の需要を満たす技術を併せ持っているのは世界でも日本だけである。業種横断的に木と人をつなぐ新たな領域を拓いている、果敢なチャレンジは迫力がある。これは世界へ発信していくことで、日本経済と文化の発展に寄与すると思う。ウッドデザイン賞のさらなる発展を期待したい。 |
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腰原 幹雄(東京大学 生産技術研究所 教授)
木造建築の世界ではデザイン分野は未開拓である、と感じてしまう。新しい技術は生まれているが、それを素直に使っているに過ぎない。今の時代に合った木造建築をつくるためには、新しい技術に加え、新しい価値観や考え方に基づいた発想が欠かせない。そのためには、異分野やデザイナーとの連携が非常に重要である。ウッドデザイン賞を通じで、交流や成果が生まれることを期待したい。 |
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鈴木 恵千代(空間デザイナー)
今回、建築・空間では今後のヒントになるものもあったが、木の文明に達した日本の先代の技を超えるようなものがまだ見当たらない、ということも感じた。建材・部材では、自分が使いたいと思えるものを評価した。それは、いかに自然で、生活の中に溶け込むかという視点である。先端テクノロジーから趣きや面白さを持つ作品まで幅広く見られ、ウッドデザイン賞のこれからが楽しみである。 |
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手塚 由比(建築家)
個人的にも木は大好きで最近、木造建築をよく手掛けている。今回、多くの素晴らしい取組が見られ、審査をしていて楽しかった。一方で、評価の視点としては作品の特徴がわかりやすいこと、デザインが優れていることを含め、全体として完成度が高いものが選ばれたと思う。木は生き物であり、木を使うことは人間にとっても自然なことである。それを伝えることが人間に対する優しさになる。 |
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木製品分野
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益田 文和(プロダクトデザイナー)★
木は日本文化を支えた中心的素材であった。石油系・金属系である素材をすべて木に置き換えるようなイノベーションのデザイン、今後はそんな迫力をもった提案が欲しい。さらに、木を向き合う産地、技術者、デザイナー、流通が手を組むことで大きなムーブメントが起こる。森林資源を日本が圧倒的に価値の高い製品にする、そこに世界に通用する新領域ができると信じている。 |
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髙橋 正実(デザイナー、コンセプター)
日本には木の文化がベースにあり、この時期にこの賞が始まることの意義を改めて感じている。デザイナーの立場から見ると、少しの工夫でさらにデザインが向上できると思えるもの、背景やストーリーをもっと見たいと思えるものが多かった。木材を使うことで生活や社会がどのように変わっていくのか、により深く触れるとよいと思う。社会の問題解決策としてのウッドデザイン賞に期待したい。 |
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三谷 龍二(木工デザイナー)
審査を通じて、改めてデザインの重要性を感じた。木を使うことは大事だが、ユーザーが欲しいと思うものに近づけていかないと生活の中に入り込まない。その意味では今後、デザイナーと生産者、川上側の共働がより必要になると感じている。生活用品には陶磁器やガラスは多いが、木は少ない。生活になじむものであり、かつ木である必然性。それを検証していくことが大切である。 |
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山田 遊(バイヤー)
木材活用の重要性は消費者側も意識しているが、あくまでも付加価値として考えている。まず顧客にとって魅力的である製品であることが大切だ。そのためには生活にもたらされる価値をコミュニケーションする必要がある。モノからコトの時代と言われるが、伝えるべきは、つくり手の思いやこだわり、機能や製法であり、それらは顧客にとって"コト"である。それが購買につながるのである。 |
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コミュニケーション分野
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日比野 克彦(アーティスト、東京芸術大学 教授)★
審査を終えて感じたこと。それは、木があまりに身近すぎ、誰もが木を知ったつもりでいるのではないか、木の可能性や役割を自分で制限していないか、ということである。より違う木の側面、役割、接し方が日常の中にきっとある。省の役割は即効性のみならず、少しの可能性でも汲み上げていくこと。皆さんを一緒に自分なりの木の接し方に着目した提案を考えていければ、と思っている。 |
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戸村 亜紀(クリエイティブディレクター)
木は親しみある素材のため、幅広い提案が集まったが、素材や用途を広げる都市の仕事、地域を支えながらもつくる仕事が、それぞれ際立っている点が印象的であった。コミュニケーションとしては、テレビCMのように短時間で伝わる仕組みを工夫すると、その良さが伝わりやすいと思う。細かな数値も大事だが、売り場が顧客にどう簡潔に伝えられるかを考えると、さらに可能性は広がる。 |
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古田 秘馬(プロジェクトデザイナー)
素晴らしい取組もいくつもあったが、森林や建築の業界内でとどまっている活動も多いと感じた。社会に伝えるという視点、異なる業界やセクター、関わっていない人をどう巻き込むかという視点が重要である。思わず動きたくなる、写真に撮りたくなる、人に伝えたくなるシンプルさ、参加のしやすさが求められている。今後も、本賞と活動が広がっていくことを願っている。 |
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山崎 亮(コミュニティデザイナー、東北芸術工科大学 教授)
コミュニケーション、あるいはコミュニティデザインを評価する際に重要な点は、どこか一つだけ秀でているだけでは響かない、ということだ。広め方はよいが、できあがったものが恰好よくない。あるいはその逆もある。そうではなく、木材や人、環境がつながり、どのように工夫すればその価値を知ってもらえるのかを考えた作品が選ばれている。今後も統合性の価値を意識して挑戦してほしい。 |
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技術・研究分野
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伊香賀 俊治(慶応義塾大学大学院 教授)★
今回、3つの部門の中では、特にハートフルデザイン部門の研究に着目した。木の良さが我々の生理や心理にどのような影響を及ぼすのか、を研究した包括的な取り組みを高く評価した。木が人間の心理や健康に与える影響の科学的エビデンスを深めていくことで、木材利用の普及につながっていくと考えている。 |
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相茶 正彦(木材・バイオマス利用コンサルタント)
多くの応募があったが、木材の主用途である住宅関連への提案が特に多かった。森林資源の活用促進を考えると、個別の提案で終わることなく、それがどう横展開、普及していくかという視点で審査を行った。木材の形のまま利用する取組も多かったが、今後はバイオマスとしての用途に対する提案も期待したい。 |
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青木 謙治(東京大学大学院 講師)
普段は木材や木質資源の性能評価やその利活用の研究をしており、その視点から作品を審査した。チャレンジングな提案もいくつか見られ、興味深かったが、評価としては今後木材利用の促進に貢献するか、普及につながるか、を重視した。その説明がきちんとできているものが評価され受賞している。こうした点をさらに深めたプレゼンテーションを期待したい。 |
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恒次 祐子(森林総合研究所 主任研究員)
木材に関する技術・研究が全国で広く取組まれていることがわかり、楽しく審査させていただいた。技術・研究分野では科学的データが重視されるが、人も、木材にも個性があり、個性どうしの関わりをデータにすることは難しい。こうしたデータの有用性に着目すると新たな木材利用の価値が見えてくると思われる。 |
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